告発します

今から書くことは、もしかすると皆さんにとってはどうでも良いことかもしれません。けれどもわたしは、一音楽ファンとしてこれを許すことができないので、少しの人数の人にでも心に留めて欲しいと思い、書くことに決めました。


海外アーチストのCDは、輸入盤か国内盤でお店で売られています。
輸入盤は言うまでもありませんが、海外で作られたもの自身を輸入して日本で売るもの、国内盤とは日本の会社が海外版元のレーベルやアーチストと契約を交わし、日本側で新たに盤からジャケットから製作し、販売するものです。また契約に則り、前払いのロイヤルティーや印税をアーチストへお支払いします。


最近、輸入盤の封を切って中に誰かの解説を入れ、「国内盤」として売り出されているものをみかけます。解説を書いている方も、売っているお店の方もほとんどご存じないことです。
なぜって、そりゃ「国内盤」と言われれば誰でもそう思うと思います。正規の国内盤と同じように自社レーベルの品番をつけ、POS番号も簡単に作れるし、国内盤リリースします、とアナウンスすれば普通に誰も疑いません。


なぜ業者がこのような真似をするのか。
これには様々な理由が予想されます。
国内盤はお店に卸す時、書籍と同じように返品可能です。お店にとってはリスクが少ないので、店頭にたくさん並びやすくなります。
そして例えば音楽雑誌で国内盤はカラー、輸入盤は白黒のページに載せるという媒体があります。
そこで本物の国内盤を作ろうとすれば、時間と手間とお金がかかります。海外盤を輸入して解説を封入し、これは国内盤ですと言うことの方が簡単です。
CDが売れなくなって来た昨今、売る為の工夫として国内盤と偽る。その気持ちはわからなくもないです。
買った人にとっても、解説がついていれば親切ですし、お店の人も売れなかったら返品すればいいし、一見誰にも迷惑がかかっていません。
でもその素晴らしい音楽を作ったアーチストの立場に立ったら、知らない間に遠い日本で勝手に日本盤らしきものが出され、それなら入ってくるはずの印税やロイヤルティーも入ってこない。もしくはアーチスト自身、この然るべき権利関係の実際を知らないでいるという場合があると思います。また、ある良質な日本のレーベルが本物の国内盤リリースを考えていたとして、先にこの偽物の国内盤が出回ってしまえば、本物のリリースを諦めてしまいます。


実際その盤自身は輸入盤ですから、音に何か問題があるわけでもなし、最終的にCDを手に取る人にとったら気にすることでもない、そもそもれっきとした「産地偽装」ですが誰も気づかないことによって何の問題にも上がらないのが現状です。
だけどわたしは、今度はCDを売っている立場として、お客さんやアーチストを騙してまで好きな音楽を売りたいとは思いません。
そんなことをする業者は日本にいくつかありますが、こうした方々がはっきり音楽に対して「お金になりそうだから」「義務だから」と仰っているのをこの耳で聞き、文章で読んだことがあります。
一番重要な「音楽が好きだから」という一言を聞くことはありませんでした。
わたしは音楽に関わる人は全員音楽が大好きに違いない、と思っていましたから、そんなチンケで薄汚れた臭い根性でこの夢ある商売をやられているのかと思うと、相当がっかりです。


わたしが言っていることは大げさで、甘いきれいごとかもしれません。
最近ではたぶん皆、人を騙すことくらい何でもないと思っていると思います。誰かを騙したり押しのけたりまでして私欲に走り、そこに良心の呵責のかけらもない方が、一般的な世の中なのでしょう。でもわたしはそれに慣れることができません。


本物と偽装国内盤の見分け方は簡単です。
本物の国内盤は、その盤面やジャケットに「MADE IN JAPAN」、日本の製作会社のロゴや会社名が入ります。
偽装は最初に述べたように、ただの輸入盤+解説です。ただ、それを売っているお店の人や解説の方に罪はありません。なぜって気付いてないから。あるのはその販売元の会社のみです。


最後に、偽装国内盤は、本物の国内盤を手間をかけて作るだけの音楽への愛情がないということを、自ら体現しているものだとわたしは思います。